『戦中用語集』

3.5
本のレビュー

『戦中用語集』の概要

表紙写真
タイトル 戦中用語集
著者 三國 一朗
ISBN-10 4004203104
ISBN-13 978-4004203100
発行年 1985年
出版社 岩波書店

レビュー

主に昭和10年代に流行した「戦中用語」をおよそ80ほどピックアップして、基本は見開き2ページないし4ページでわかりやすく解説したもの。章立てとしては、1 関東軍-「真珠湾」まで、2 零戦-侵攻、そして敗退、3 大東亜共栄圏-詐術としての戦中用語、4 疎開-「銃後」の暮らし、5 ぜいたくは敵だ-標語・軍歌・風俗、6  徴兵検査-軍隊の内と外、7 引揚げ-終戦前後、の7つの章から成っている。

「大本営」「八紘一宇」「神風」「転進」「隣組」「撃ちてし止まむ」「ぜいたくは敵だ」「欲しがりません勝つまでは」といったメジャーな戦中用語のほかにも、「時局捨身動物」「雑炊食堂」「興亜奉公日」「ゲートル」「移動演劇」のようなマイナーな語彙まで拾い上げている。「用語集」であることは確かだが、全般にひとつの「戦中用語」をテーマに据えて、戦中を生きた著者自身の経験や、戦中派共通の常識のようなものを織り込んだエッセイとして書かれた文章といった感じで、それが本書の読みやすさにあらわれている。

こうした体裁ゆえに、本書の内容が学術的に見てどこまで正確であるのかはよく注意しなければならないところだが、戦争を知らない世代に対して、経験者が当時の世相をわかりやすく伝えるという意味では成功しているといえるのではないだろうか。

著者について

三國 一朗(みくに いちろう)

大正10年名古屋市で生まれる。平成12年逝去。昭和18年、東京帝国大学文学部社会学科を繰り上げ卒業、徴兵され昭和19年に関東軍入隊。戦後はアサヒビール入社、同社提供のテレビ番組「何でもやりまショー」の司会としてテレビ出演、昭和34年に退社後も放送タレントとして活躍するかたわら、『昭和史探訪』全6巻などの編著にも携わった。