『日本民俗学概論』

5.0
本のレビュー

『日本民俗学概論』の概要

表紙写真
タイトル 日本民俗学概論
編者 福田 アジオ・宮田 登
ISBN-10 4642071946
ISBN-13 978-4642071949
発行年 1983年
出版社 吉川弘文館

レビュー

この『日本民俗学概論』は、柳田國男以来の日本民俗学の成果の蓄積を、一定の基準のもとに体系化して、はじめて民俗学を学ぶ人たち、特に大学で学ぶ学生の需要に応えて、平易でかつ正確に解説することを目的とした概説書である。

内容は「空間の民俗」、「時間の民俗」、「心意の民俗」、「特論」の4つの章から成っている。「空間の民俗」では、民俗学の基本であるイエやムラについてのほか、焼畑を含む稲作・畑作農業、狩猟民俗や漁村民俗、家船の人々や木地師などの漂泊民などについて触れている。「時間の民俗」では、盆と正月にはじまり、アエノコトや虫送りなどの農耕儀礼、誕生から子供組・若者組への加入、婚礼、葬送といった人生儀礼などについて述べる。「心意の民俗」では、各種の禁忌とハレ・ケ・ケガレの関係、宮座と講、憑き物、祭りと芸能、生き神信仰などについて解説する。最後の「特論」は、都市民俗をはじめとする最近の民俗学のトピックについていくつか項目を割いている。

編者の福田アジオ、宮田登のほか、岩本通弥、真野俊和、新谷尚紀、宮本袈裟雄、鳥越皓之、松崎憲三、井坂康志などそれぞれの分野では著名な研究者が著者として名を連ねており、網羅的で信頼性の高い情報が得られるという点では、かなりポイントの高い概説書といえるだろう。もちろんすでにある程度の知識を得ている層にとっても、折に触れて見返してみることで、新たな発見があるかしれない。

編者について

福田アジオ(ふくた あじお)

昭和16年三重県生まれ。1963年東京教育大学文学部史学科卒業、1971年東京教育大学大学院文学研究科修士課程修了。1984年武蔵大学教授、同年国立歴史民俗博物館教授、1993年新潟大学教授、1998年神奈川大学教授、2012年柳田國男記念伊那民俗学研究所所長を歴任。現在、国立歴史民俗博物館名誉教授。著書に『日本村落の民俗的構造』(弘文堂、1982年)、『番と衆』(吉川弘文館、1997年)、『日本の民俗学 「野」の学問の二〇〇年』(吉川弘文館、2009年)、『歴史と日本民俗学 課題と方法』(吉川弘文館、2016年)などがある。

宮田 登(みやた のぼる)

昭和11年神奈川県生まれ、平成12年逝去、従四位勲三等瑞宝章追贈。昭和35年東京教育大学文学部卒業、昭和41年東京教育大学大学院文学研究科博士課程修了。昭和51年「ミロク信仰の研究 日本における伝統的メシア観」で東京教育大学より文学博士号取得。昭和57年筑波大学歴史人類学系教授、平成9年神奈川大学経済学部教授などを歴任。他に国立歴史民俗博物館客員教授、文化庁文化財保護審議会専門委員、日本民俗学会代表理事(会長)、筑波大学名誉教授など。著書に『生き神信仰』(塙書房、1970年)、『ミロク信仰の研究 日本における伝統的メシア観』(未來社、1970年)、『近世の流行神 日本人の行動と思想』(評論社、1972年)、『妖怪の民俗学 日本の見えない空間』(岩波書店、1985年)、『現代民俗論の課題』(未來社、1986年)、『山と里の信仰史』(吉川弘文館、1993年)、『宮田登 日本を語る』(吉川弘文館、2006-2007年)など多数。